2011秋期総合特集V Top interview

イノベーション生み出す 澤村(株)常務 清水民生

トリコットの取り扱いで国内有数の力を誇る澤村。清水民生常務は歴史の長い織物と比べて「トリッコットはまだまだ発展途上の素材」と強調、イノベーションによって今後も用途開発が進むと見る。この点で今後も北陸産地と同社の関係に変化はない。一方、海外での生産、販売の拡大も大きな課題。中国現地法人の設立で生地、製品の内販を加速させ、タイでのオペレーションも進めていく。激動の時代を生き抜くために必要なのは多角的視野による「イノベーション」だ。

 

−第3四半期までは前年同期比微増収で推移していましたが、9月期決算はどのような着地に。

通期では売上高が前年比0.7%減の122億円となり、経常利益は80%増、純利益は黒字転換を果たす見込みです。テキスタイル事業とインナー製品事業が総じて堅調に推移しましたがカジュアル製品OEM事業が苦戦を強いられました。

中国での製品OEMはますます難しくなっていきます。店頭でモノが売れない、日本の製品は安い、品質は厳しい、縫うのが難しい複雑な素材が多いといった状況のなかで、クレームが多発し、為替も逆風となりました。今後は特に製品で無理な受注を控えるなどの措置をとり、収益性を重視していきます。

−結果、テキスタイルと製品の構成比率はどうなりましたか。

20109月期はテキスタイルが51.3%、製品が47.9%でしたが、未集計ながらこの差が広がりました。

−資材や輸出事業はいかがでしたか。

自動車資材向けは震災の影響を受けましたが、テキスタイル全体の5%と規模的に小さいため影響は軽微でした。今期からは本格的に回復してくるでしょう。

輸出はインナー素材の対米輸出で大口取引が決まるなどの良い面もあったのですが、台湾、香港、中国などアジア地区向けが為替の影響で大苦戦しました。ただ、当社独自の商品は売れてます。価格が合わないものに関しては、現地生産も考えていく必要がありますね。

−中国現地法人の設立やタイの事務所開設など海外戦略が加速してます。

昨年立ち上げたタイの事務所は当初、女性スタッフが1人いましたが、現在は無人です。出張ベースで対応していますが、現地採用を含めて常駐人員を配置する予定です。

タイでは丸編み、トリコットの生産からスタートしており、製品のオペレーションまで視野に入れています。

中国現法は正式に認可を受けましたが、本格稼働は年末か年明けになります。手続きの関係で延ばし延ばしになっていますがビジネス自体は進めています。ポイントは内販で、インナー製品、カジュアル製品、テキスタイルの内販拡大に力を入れます。また、製品OEMの生産管理や日本からの純輸出の窓口としても活用します。

実質的な初年度となる来期は、売上高1億円、若干の黒字を目指し、近いうちに売り上げは5億円に引き上げたい。増員も図っていきます。

−今期の重点戦略を教えてください。

ロスの無い経営を目指します。売り上げにはこだわらず、収益を重視します。そのために必要なのは、モノ作りの原点に帰るということです。混沌とした時代だからこそ地道に基本に、というのが大事なのです。ただ次への仕掛けも頭では考えていきますし、決定すれば発表します。

今の時代は様々なところに気を配らなければいけない。昔のように、塊が一つあるようなシンプルな構造でなく、ほかの産業も注視していかなくては、イノベーションが生み出せません。

一点集中主義では競争に勝てません。自社のテキスタイルがどこでどのような使われ方をするかすら予測できない状況です。

そうした意味では、トリコットに強い当社には有利な状況です。トリコットは織物と違って歴史が浅く、まだまだ発展途上の素材と言えます。用途開発の余地があるということで、当社としても、様々な分野の情報を集め、イノベーションを生み出していくつもりです。

 

心に残る出会い

トリコットとの出会い

 澤村に入社する前は伊藤忠商事につとめていた清水さん。そのときも含め、サラリーマン人生の約半分に当たる21年間を福井と金沢で過ごした。トリコットと出会ったのは23歳のとき。以来、澤村に入ってからも、この世界との関係が密接に続く。産地の人たちは公私ともに交流があり、「今でも支えてもらっている」と感謝の意を示す。“トリコット歴”が長く、「日本のトリコットは世界に冠たる素材」と言い切る清水さんだが、「もはやその道のプロですね」という貴社の言葉には、「自分がプロだと思っていない。プロの人を知っているだけ。」と謙遜する。

 

 

繊維ニュース 2011年(H23年)1111日 掲載